第3章 2人の距離3
仕事も終わり帰り支度をゆっくりしているとバタバタと帰る4人。
俺は今日はこの後ないし車で来ていた為皆んなを見送りながら支度をして、いつも俺らが帰るまで残ってくれる楓ちゃんに軽く挨拶して控え室を後にした。
なんとなく他の人の控え室を通るように歩いてみた
雪乃さんの楽屋が何処にあるかなんてわからないのに。
「「あ…」」
それでも偶然に見つけてしまい思わず笑みがこぼれる
「もう何回目よ、これ」
久しぶり。とか、元気そうで良かった。とか。
当たり障りない言葉から始めるつもりがそんなことが先に出てしまう
ですね。と笑って言う由梨はあの時より大人っぽくて少しドキッとした。
それでも由梨を見ているとやっぱり意地悪な自分が出て来てしまう
敢えて、じゃーねー。と手をひらひらさせて由梨の前を通り過ぎた。
引き止められることをわかっているのに。
「あ、あの!」
ほらね。やっぱり。
出来るだけニヤつかないように、ん?と言って振り向く。
返す言葉が見つからないらしくキョロキョロしている由梨は思ったとおりの反応。
フフッと笑い、ポケットからキーケースを取り出した
「乗ってく?…で、飯付き合ってよ」
どうする?とつづけて聞くと素直に頷く。それはそれは嬉しそうに。
「また。…そっちなのね」
運転しはじめてミラー越しに後部座席にいる由梨を見て笑いながらそう言うと、え?なにがです?と不思議そうにしているので、いんや。何でもない。と返した。
結構頑固だったりして。
そんな事を思って見えないように笑った
連れて行った店は由梨とも前によく行っていた場所で由梨も馴染みのある場所だからか暫く会っていなかったのに気を抜いてくれていた。
「そいや、専属なんだっけ?雪乃さんの。」
お箸の先を口に軽く当てたまま話す
「そうなんですよ。楓さん紹介で。」
その前から言われてたんですけどね。と言いながらお皿の中をつんつんしている由梨にふーん。と軽い返事を返す