第1章 ~初夜の声は、さらすもの。~
翌日。
朝早くに出発して向かった先は
これから私が暮らしていくことになる街…
孝一さんのふるさと。
行く道のりは
車の離合も難しいくらい狭い
崖の上の細いくねくねした道のり。
見下ろすと、清らかな川が流れていて
目の前に山が迫ってくる風景が、
ずっとずっと続いていく。
私が育った街も割と田舎だったけど、
ここはそれ以上の山奥だな…
「はるか、あんまり田舎で
びっくりしてるんじゃないかい?」
「いえ…いや…少し…
お買い物とか、どこでするんですか?」
「ああ、それは、町…というか、村の中に
スーパーが一軒、あるから。
大丈夫、病院も銀行も郵便局も小学校も
飲み屋も食堂も、一つづつはあるよ…って
そんなこと言ったら、却って不安かな?」
「ううん、孝一さんがいてくれるから。」
「そうだよ。僕と僕の家族がいる。」
そんな話をしながら車で3時間ちょっと。
ようやく、到着した。
…私が生きて行く町。というか、村。
そして、
「ここ?」
車から荷物をおろしながら、
孝一さんが言う。
「そう。ここが、僕の実家。
そしてこれからははるかの家。」
実家にお世話になることは聞いていたし
納得はしていた。
だけどそれは、
生活が落ち着くまでのことかな…と
うっすら思っていたのだけど
ここに来るまでの道のりで、考えを改めた。
確かに、アパートやマンションなんてものは
ここにはない。
本当に、この”家”に嫁いだのだ、と
覚悟を決める。
「孝一さん、私、頑張ります。」
それにしても、大きなお屋敷…
自分の荷物を手に、古くて、でも
手入れの行き届いた家を見上げる。
「さぁ、行こう。みんな、待ってる。」