第1章 ~初夜の声は、さらすもの。~
…その日の夕方、
新幹線は大きな街に到着した。
「実家はここから車で3時間かかるんだ。
今日はここに泊まって、
明日の朝、早くに出発するよ。
向こうについたらまず入籍して、
午後、地元の神社で、
家族と親戚で神前式をするからね」
「そうなの?…神前式って…何を着れば…」
「心配いらないよ。うちに嫁ぐ人たちが
代々着てきた白無垢が準備してある。
神社も、うちとは何代もご縁のあるお宮だ。
…だってほら、うちは、宮大工だから。」
さっそくのカルチャーショックだらけ。
代々受け継がれてきた白無垢。
代々ご縁のあるお宮。
…時代劇みたいな話で…
「私、大丈夫、かな?しきたりとか何も…」
「大丈夫だって!はるかは僕が選んだ女性だよ。
いつだって僕がそばにいるから、安心して。
…さあ、今日は疲れただろ?
明日は出発が早いからゆっくり休んで。
おやすみ。」
小さいけれど清潔なビジネスホテル。
一階のレストランで軽い食事をし、
準備してあったシングルの部屋に
それぞれ入った。
…本当は、
披露宴も済んだことだし
今日が私達の初夜なのかな、と思っていた。
だから、少しだけ覚悟はしていた。
でも、やっぱり孝一さんは紳士だ。
“入籍するまでは、触れないよ。
でも、同じ部屋に寝てしまうと
僕が眠れなくなりそうだから…”と
今日もこうして別々の部屋にしてくれている。
つまり、
明日は、間違いなく、初夜だ。
明日、私は、本当に身も心も
孝一さんのモノになる。
私の初めてを
孝一さんに捧げることが出来るのが
嬉しかった。
友達には「今の時代にそんなこと言ってると
却って面倒くさいって思われちゃうよ!」
なんて言われたこともあるけれど…
私は、生涯、孝一さんだけのもの。
明日、訪れるであろうその時のことを考えると
身体が熱くなる。
だけど、
いろんな疲れがたまっていたようで
いつのまにか、私は眠っていた。