第1章 ~初夜の声は、さらすもの。~
それからすぐに私は仕事を辞め、
いわゆる花嫁修業をして過ごした。
今までずっと実家暮らしで
家のことは母に甘えっぱなしだったから。
そして、この町で、私の親戚と、
私達二人の友人を招いた
小さなパーティーを開いて
それを結婚披露宴とし、
その二日後、
母や地元の友人に見送られながら
私は孝一さんと二人で、
孝一さんの故郷へと出発した。
新幹線。どんどん遠くなっていく故郷。
ほとんどこの街から出たことのない私。
誰も知らない街での暮らしに、不安が募る。
いつの間にか無口になっていたらしい私を
励ますように、孝一さんが言う。
「不安だよね。
でも、僕がいるから。
それに僕の母も、全然知らない土地から
何も知らない状態で嫁いできた人だから、
きっとはるかの気持ちを理解してくれるよ。」
ギュッと握ってくれた手を握り返す。
そうだ。
私は孝一さんと生きて行くって決めたんだ。
これからは、孝一さんの家族が私の家族。
自分の人生をかけて愛すると決めた人との
新しい暮らし。
もう後戻りは出来ない。