第2章 ~ダメな、蜜~
…実は私にとって
オナニーは安眠の鍵でもあって。
寝付けない時でも、1人で慰めると
すぐに眠気がやってくる。
このタイミングで眠りにつければ
朝までぐっすり。
そんなわけで、
優介と離れて最初の夜は、
寂しかったけれど
一人Hですぐに眠れた。
寂しがってばかりはいられない。
遠距離恋愛で仕事が手抜きになる…なんて
一番悲しむのはきっと優介。
頑張らなくちゃね。
ただでさえ、春先の学校は、
何もかもが変わる、
一年で一番の忙しい時期。
やるべきことは、たくさんある。
翌日は、気分も新たに出勤。
なんといっても当分は優介とのデートもない。
今は仕事に集中させてもらえることを
ありがたいと思うことにして
新年度に向けての準備にとりかかった。
まだ、高校は春休み。
三年生はもうおらず、
一年生はまだ入学していなくて
学校はガランとしている。
「西崎先生、まだ残る?」
同僚の先生に声をかけられて驚いた。
学年職員室はもう私とその先生の二人きり。
すっかり西陽が傾きかけている。
「あ、もう少しだけやって帰ります。」
「そ。じゃあ私、悪いけど先に失礼するわね。」
「お疲れ様でした。」
ガランと静かになった部屋。
「さ、もうちょっと頑張ろう。」
髪の毛を結びなおしてパソコンに向かっていると
カラカラカラッ
遠慮がちに扉が開いた。
「先生…教えてほしいことがあるんですけど。」
「あら、高橋君。」
高橋ナオキ。
この間まで、2年生…今度から3年生になる。
どちらかといえば目立たないタイプだけど
しっかりしていて先生達からの信頼も厚く
生徒会役員の一人でもある。
「春休みになのに来てたの?生徒会?」
「えぇ、まぁ、そうでもないですけど。」
「よくわからない返事(笑)
あ、質問ね?何?春休みの宿題?
それとも新学期の行事について?」
「入っていいですか?」
「どうぞ。」
丁寧に一礼して静かにドアを閉める仕草が
他の男子生徒よりグンと大人びて見える。
私のデスクの隣に立った高橋君の
メガネをかけた真面目そうな顔を見上げながら
話しかける。
「で、教えてほしいことって、何?」
高橋君は、真面目な顔に
ニヤリとした笑顔を貼り付けて、
言った。
「西崎先生…
昨日の夜、オナニー、しました?」
…え?