第1章 ~初夜の声は、さらすもの。~
約束してくれた言葉の通り、
孝一さんは、
私のことをとても大切にしてくれた。
「君は僕の奥さんになる人だから。」と
いつも守ってくれて、
デートの帰りはいつも家まで送ってくれ、
母に挨拶をしてから帰っていく。
女手一つで私のことを育ててくれたからか
しつけに厳しい私の母も
すっかり孝一さんのことを信頼し、
「孝一さんと一緒」といえば
安心して送り出してくれるようになった。
…孝一さんのご両親とは
お見合いの時にお会いしたきりだけど、
お見合いだから、
どんな家柄なのかくらいは
知っている。
北の方の、古い街の、代々続く旧家らしい。
宮大工として歴史あるお家らしく
由緒正しいお家柄。
孝一さんはその家の長男で、
いずれお家を継ぐことになるんだろう。
「はるかちゃん、
結婚したら僕の故郷で暮らすことになるけど…
僕についてきてくれるかい?」
そう言われた時も、何の迷いもなかった。
「もちろんです。
孝一さんのお家に嫁ぐには
私は未熟者すぎるけど…
お義母さんに習って、頑張ります。」
そう言った私を
孝一さんはギュっと抱きしめて
「はるかに出会えて、俺は幸せだ」って
言ってくれたっけ。