第3章 女主人
「………………」
「申し訳ございません!ご主人様、申し訳…」
ひたすらに額を擦り付けて謝るノアールの姿を、頬を膨らませたまま見詰める。
――――――申し訳ございません!奥様!
ふと、昔見た光景が頭に浮かんだ。
本当は特に怒ってなんていなかった。でも、主導権を握られてしまった事が悔しかったから、怒った振りをしただけだった。
あの時、彼は怒った振りをした私にどんな反応をしたのだっただろう。
ノアールは、ガクガクと怯えるように震えていたけれど何も答えない私をいぶかしんで恐る恐る顔を上げた。涙ぐんで頬を膨らませて見せる私の姿を見たノアールは、驚いた様に動きを止めると…
「くっ…ははっ、す、すいません」
―――――――っ、くくっ、ごめん
次いで笑い出した。
「すいません、笑うつもりでは無かったんですが、ご主人様が、その…」
可愛くて、と言われてまた脳裏を思い出が過った。
―――――――奥様が余りにも可愛い顔をするから
トクンと胸が鳴った。甘い疼きが体を支配する。あぁ、そうか、やはりノアールは彼に似ているのだ。
そこまで思い到って大きく息を吐き出した。
「もう、笑い事じゃ無いのよ?加減をしてくれないと体がもたないわ。私はノアールみたいに若くないのだから」
「えっ、ご主人様はまだお若くて綺麗です」
きょとんとした顔で口にしたその言葉がおべっかなどではなく、本心からだと分かるから質が悪い。その言葉に悪い気がしないのは確かだった。
私は八つ当たりにノアールの髪をグシャグシャと交ぜ乱すと、その唇にチュッと口付けた。そして自ら足を開くと、片手でノアールと繋がるはずの部分に触れて見せる。
「んっ…」
指を挿し込み、ここに入れるのだとノアールに教える。指に蜜を絡め、掻き回し指を増やして挿入に備え慣らして見せる。その合間もノアールの熱いほどの視線を感じていた。
「ぁ…っん、ノア、分かる?ここッ…よ」
ノアールに舐められ達したそこは既に十分濡れていた。ノアールは私の言葉に誘われるように指を伸ばしてきた。私がそれを見て自分の指を引き抜くと、代わりにノアールがゆっくりと指を中へと進めてくる。
「ふっ…んッ…」
「す、ごい…暖かい…」
ノアールの人差し指が根本まで埋め込まれ、息をついた。そしてその指が抜いたり、挿したり、恐る恐る動き出した。