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ただ一つの心を君に捧げる

第2章 黒を持つ奴隷


○奴隷○

何時からこの生活を続けているか分からない。気付いたら俺は奴隷で、奴隷商人の元で他の奴隷の世話をしていた。飯は一日一回、勿論育ち盛りの男である俺には足りる訳がない。何時もひもじい思いをしていた。
風呂にも入れて貰えず、移動の途中に川があればそこで時々水を浴びた。
親方の特に俺への扱いは酷かったと思う。

綺麗な男や女は比較的大事にされる。飯も一日二回で何時も綺麗にして貰っていた。何故なら、そいつ等は売り物になるからだ。
親方は、よく俺を憂さ晴らしに殴りながらこう言った。

「お前が黒髪、黒目じゃ無かったらなぁ」

そう言いながら俺が泣いて詫びるまで殴ったり鞭打ったりした。

俺は黒い髪で、黒い目だから売れない。他の奴隷達が味見と称して犯されている中であっても、俺には誰一人として触れようとしなかった。
何故だろうと疑問に思っていたら、同じ奴隷の歳上の女が教えてくれた。

俺は「呪われた一族」なのだそうだ。黒髪と黒い瞳はその一族の証だと言われた。昔、黒い竜のせいで世界が滅びかけた。それ以来黒い色を体に持つ者は嫌われ、特に黒髪と黒目を持つ者は「呪われた一族」と呼ばれて迫害され殺された。
触ると呪われて不幸になると言われたことがある。それを思い出して、だから俺は売れないのかと納得した。

女は教えてやったのだから、股の合間を舐めろと言った。女は木箱に座り足元の布を引っ張り上げると、何も穿いていない下半身をさらした。膝を立てて開いて見せた女の股の合間は肉が蠢き奇妙だった。
昼間に手を出してきた男が下手くそで欲求不満なのだそうだ。

「俺が怖くないのか」と聞くと女は「もう十分不幸だから、今さら気にしない」と言った。俺は知りたい情報を教えてくれたのだから、女の望む通りにしようとしたら親方に見つかってしまった。

激怒した親方は、俺が気を失うまで何度も何度も殴り蹴った。

翌日、女は「あそこだけは嫌だ!行きたくない!」と泣き叫びながら大きな太った男に引きずられて行った。他の奴隷達がそれを遠巻きに見ながら「可哀想に。あそこじゃ、死んでも楽になれない」と言っていたから、やはりあの女は俺のせいで不幸になってしまったのだろう。

毎日ヘトヘトになるまで働かされ、時折親方の気晴らしの為に殴られる。それでも俺は殺されずに生きて、僅かな飯であっても食えるだけましだと自分に言いきかせた。
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