第2章 春、君との出会い
ー赤司sideー
入学式の日の朝、校門を通り抜け昇降口へと歩いていた時。前を歩いていた同じ新入生の女子がいきなり派手に転んだ。
咄嗟に手を伸ばすと、彼女は呆然として俺の手を掴んだ。彼女が何か言おうとしていたのは分かったが、新入生代表挨拶の準備あるためそのまま急いで昇降口へと歩を進めた。
教室に入り席についていると、例の彼女がやってきて顔を真っ赤にしながら礼を言ってきた。このとき俺はなぜかとても大きな嬉しさを感じた。別に人に礼を言われるのが好きなわけではない、きっと彼女が自分に話しかけてきてくれたからだ。
こんな気持ちになるのは生まれて初めてだからよくわからないが、きっとこれが[誰かを愛しく思う気持ち]つまり恋愛感情というものなのだろう。
今すぐに名前が知りたい。口に出して呼びたい。彼女に名前を聞くと山田 花子というらしい。このあと俺は思わず彼女を下の名前で呼んでしまった。そう、花子と。俺はもう少し慎重にならないと花子を怖がらせてしまうと激しく後悔した。
しかし、花子は予想に反し顔をまた赤くして照れた。
俺はつい知らないふりをしてしまったが、花子が照れたのを見逃さなかった。
愛しい。何よりも愛しい。そして俺は花子に恋に落ちた