• テキストサイズ

誰得?俺得!!短編集

第4章  【山崎宗介】Emerald green





そこには、あの頃のあどけなさが無くなり、がっしりとした体格のいい男の人になった凛がいた。

「「凛!」」

私と宗介がその名前を呼ぶと、呆れ顔だった彼の顔に驚きの色が浮かぶ。

「……なのか?」

私もあの頃からそんなに変わったんだろうか。

六年近く会っていなければそうなるのも無理ないのかもしれない。

私が小さく頷いて見せると、凛は急にむっとした顔になって私達のところへ近づいて来る。

「俺には連絡寄越さないくせに、宗介とはちゃっかり会ってんのかよ!」

そう言って私に詰め寄って来るところなんか、女々しいと言うか、可愛らしいと言うか、昔から変わらないなと思う。


「ごめんってば。シティボーイになっちゃった凛に会うの、なんか怖くてさ」

ちょっと面白おかしく言ってみたら、やっぱり凛は食い付きがいい。

“なんだよそれ!”って延々ぐちぐち言ってる凛と、そんな凛を見て笑っている宗介。

一緒に居るのが当たり前だったあの頃と同じ景色が、今ここにある。それが嬉しい。



だから、今日はまだ言わなくてもいいよね。

もう少しこの三人で、こうして笑い合えるのを楽しもう。

それからでも全然、遅くはない気がした。



たぶん私はずっと海が好きで、その色の瞳をした彼が、ずっと好きだから。





**END**
/ 55ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp