第4章 【山崎宗介】Emerald green
そこには、あの頃のあどけなさが無くなり、がっしりとした体格のいい男の人になった凛がいた。
「「凛!」」
私と宗介がその名前を呼ぶと、呆れ顔だった彼の顔に驚きの色が浮かぶ。
「……なのか?」
私もあの頃からそんなに変わったんだろうか。
六年近く会っていなければそうなるのも無理ないのかもしれない。
私が小さく頷いて見せると、凛は急にむっとした顔になって私達のところへ近づいて来る。
「俺には連絡寄越さないくせに、宗介とはちゃっかり会ってんのかよ!」
そう言って私に詰め寄って来るところなんか、女々しいと言うか、可愛らしいと言うか、昔から変わらないなと思う。
「ごめんってば。シティボーイになっちゃった凛に会うの、なんか怖くてさ」
ちょっと面白おかしく言ってみたら、やっぱり凛は食い付きがいい。
“なんだよそれ!”って延々ぐちぐち言ってる凛と、そんな凛を見て笑っている宗介。
一緒に居るのが当たり前だったあの頃と同じ景色が、今ここにある。それが嬉しい。
だから、今日はまだ言わなくてもいいよね。
もう少しこの三人で、こうして笑い合えるのを楽しもう。
それからでも全然、遅くはない気がした。
たぶん私はずっと海が好きで、その色の瞳をした彼が、ずっと好きだから。
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