第4章 【山崎宗介】Emerald green
海は、その時々でいろいろな表情を見せる。
穏やかに凪いでいる日もあれば、人を寄せつけないほどに荒れる日もある。
それでもいつもそこにあって、私を安心させてくれる海が大好きだった。
けれど、あの日は違っていた。
突然牙を剥いた海は、私の大事な家族を奪っていった。
恐いと言う気持ちよりも怒りの方が強くて、海が近い自分の家を恨んだ。
学校に行く時も帰って来る時も、外に出る時はいつだって、憎らしいくらいに澄んだ青が目の前に広がった。
それでも私の居場所はここにあって、お父さんとの思い出も、この町にはたくさんある。
だからどうしても、この町を離れる気になれないのかもしれない。
だから、友達の多くが地元から離れた大学に進学するのを決める中で、私はここに残ることを選んだ。
大学に行かず就職するのは、前々から何となく決めていたことだった。
女手ひとつでここまで育ててくれたお母さんに、これ以上迷惑をかけれないって思っていたのが半分。
あとの半分は、深く勉強したい分野がたまたま思い付かなかっただけ。
それと、この田舎町で卒業前に就職先が見つかったのも大きかった。
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