第15章 Loved one 家康ルート
「あっ、家康!」
そう言って駆けてくる飛鳥
『なに…』
そう言うと飛鳥は必ず俯く
別に悲しませたいわけじゃない。
どうやって接していいのかわからないだけだ。
「あっ、あの…ワサビにね…」
ワサビとは家康の飼ってる子鹿だ。
怪我をしているところを家康が助け、それから妙に懐かれてしまいそのまま御殿に居着いてしまった。
しどろもどろ話し出す飛鳥に
『だから…なに』
気持ちとは裏腹に口をつく言葉は冷たいもの…
「あっ…えっと…なんでもない。ごめん」
そう言って駆けて行ってしまう
(くそっ!なんで普通に話せないんだよ!)
天邪鬼が故に好きな飛鳥に優しく接してやれない自分に苛立ちを覚える。
そして他の武将達には嫉妬する
目の前で好きな女にベタベタ触って、飛鳥はそれにニコニコしながら対応している
(飛鳥も飛鳥だよ。皆んなにはあんなにコロコロ表情変えて…笑って。
俺には…なんでいつもビクビクしてるんだよ…)
確かに飛鳥が戦国時代に来た頃は家康に対してビクビクしていたかもしれないが、しばらく経つと家康にも笑顔で接していた飛鳥。
だがあの日以来また、家康にビクビクする態度をする飛鳥。
そんな飛鳥にも苛立ちを覚えていた。
『何あれ。ムカつく』
そう言った家康に近づいて来た秀吉
『さっき飛鳥とすれ違ったんだが、あいつ泣いてたぞ?飛鳥に何かしたのか?』
家康の呟きを聞いて怪訝そうな表情で秀吉は問う
『別に。何もないですよ。』
苛立ちを隠しながらその場を去る。