第11章 loved one 秀吉ルート
『おっ!おい!』
お酒の匂いと飛鳥自身の甘い香りが鼻を擽る
飛鳥は秀吉の上に覆いかぶさると
「ひでよししゃん…ひでよししゃん」
ふにゃふにゃ笑いながら秀吉の頭を撫でる
『っ』
あまりの誘惑に衝動的に飛鳥を抱きしめたまま身体を翻し飛鳥を組み敷く形になる
今度は秀吉が覆いかぶさると様になり飛鳥を見下ろす
「ひでよししゃん…このまま聞いて?」
ゴクリと唾を飲み込んで飛鳥を見る
「私…ひでよししゃんのことが、しゅき」
ふにゃふにゃしながら満面の笑みを向ける
『っ、なっ!何を…』
そっと飛鳥の手が秀吉の頬を包む
目を瞑り微笑みを絶やさぬまま
ただ口調は真剣味を帯びて…
「秀吉さんの事好きなの…ずっと好きだったの…でも汚れたから…だから気持ちだけ伝えたくて…妹としてでもいいから…側にいさせて…」
突然の告白
想いが通じていた喜び
一瞬で思考が停止する
飛鳥の頬をそっと撫でる
気持ち良さそうに擦り寄る飛鳥
『飛鳥…俺は…俺も…』
と言いかけると頬に触れていた飛鳥の手が床に落ちる
(ねっ!寝た…)
スヤスヤと気持ち良さそうな寝息を立てる飛鳥を見下ろす…
苦笑いをしてそっと抱き上げる
横抱きにして褥に向かう
そこには1組の褥
抱き締めたままかぁっ!っと顔が熱くなる
(なんで1組…御屋形様?謀られたか…)
信長には全てお見通しだった
秀吉が飛鳥を好いている
飛鳥もまた秀吉を好いているのを信長はわかっていた
いや、信長だけではない
他の皆もわかっていた
距離の縮まらない二人をヤキモキしながら見ていた皆はこの温泉に視察と称して二人を預けた
女将には恋仲だと言い褥も1組でいいと…
全てを悟った秀吉
だが腕の中で酔っ払いながらスヤスヤ眠る飛鳥をそのまま奪うことは出来ず、そっと褥に寝かせる
優しく頭を撫でてから布団を掛けてやり部屋を出る
盃に酒を注ぎ雲ひとつない星空を見ながら今までの事を思い返す
どれくらいそうしていただろう。
不意に飛鳥の声が聞こえる