第58章 花魁ノ舞
ニコニコ微笑むそのお客さんを見て、飛鳥は違うと言えなかった。
「へぇ…」
花織さんと同じ様に返事をして屏風の前に立つと現代で習っていた日本舞踊を踊ってみせる…
飛鳥を見つめるお客さんは幸せそうな顔をして見つめる。
音も歌もなく、着物の擦れる音のみが聞こえる中飛鳥は舞を踊り終えた。
『あぁ…やはりお前の舞は素晴らしいな。まるで天女の様だ…』
飛鳥の手を取り撫りながら微笑む初老のお客。
飛鳥は少しばかりそのお客と会話をするのであった…
飛鳥が部屋を出でしばらく経った頃…
『飛鳥、戻ってこないな』
秀吉が心配気に呟く
『少し酔ったから、風に当たると言ってましたが…』
『まさか迷子にでもなってるんじゃねぇーか?』
家康の言葉に不安が募る政宗が外を見に行く
『俺も探してきます。政宗さんじゃ斬りかねない』
家康も後を続く。
少し歩いた先の部屋で飛鳥の声
薄く開かれた襖から鞘に手をかけた政宗が様子を伺う
『飛鳥のやつ…』
ボソッと言った声に家康が中を覗くと、初老の男に立たされて扇子を構え踊り出す飛鳥。
『あの子…何やってるの』
家康が襖に手をかけると、政宗が押さえる
『あの男、飛鳥を遊女と間違えたんだろう…見ろあの顔。』
そこには微笑む男
大切な物を眺めるかの様に愛おしそうに見つめている
『そうですね…害はなさそうだ。』
家康は部屋に戻ると信長達に事情を話す。
『花織…あの部屋の遊女を探して参れ。飛鳥が解放されん』
『へぇ…』
花織が目配せすると近くにいる新造が席を立つ
秀吉が飛鳥を心配して部屋を見に行くと、踊り終わった飛鳥が客と微笑み合う。
『立派な遊女みたいだな…ちゃんと客を喜ばしてる…』
『あいつの優しさだな…』
政宗も秀吉も飛鳥を見守る。
そこに遊女を連れた新造が戻ってくる。
その遊女は確かに少し飛鳥に似ていた…