第58章 花魁ノ舞
『本当に…飛鳥なのか?』
驚きを隠せない秀吉が呟く
「えっ?うん、そうだよ?」
家康は徳利を落としたままぼうっと動くことができない…
『飛鳥…お前…見違えたな…』
政宗が飛鳥の前に立ち頬を撫でる
「っ…!政宗!」
『飛鳥があんまりに綺麗でな…』
飛鳥を見つめてたまま微笑むと、飛鳥が照れて下を向く…
『飛鳥…来い』
信長に呼ばれ、隣に座ると徳利を持つ信長にお酌をする
『良いではないか…今宵夜伽でもするか?』
ニヤっと笑いながら信長が言うと、家康が思わずお酒を吹く
『きったねーな』
見事に政宗にかかり顔を拭きながら政宗が睨む
『すいません…』
口元を拭きながら頬を染める家康。
飛鳥をチラチラ見るが直視できない…
『御屋形様…』
秀吉も頬を染めて信長を制す
「信長様っ!御戯れはよしてください」
釣られて飛鳥も頬を染める
『戯れではない…のぅ花織』
『へぇ…飛鳥様は花魁にもなれましょう…』
花織が微笑むと飛鳥は慌てて否定する
「いやいや!私なんて足元にも及ばないです!」
徳利のお酒を飲んで照れを隠す飛鳥。
各々が飛鳥に見惚れながら酒を酌み交わす。
暫くすると飛鳥が席を立つ
『酔ったの?』
「うん、少しだけ。風に当たってくるね」
家康が少し心配そうに見送る
外に出ると草木を揺らす風が飛鳥の頬を撫でる
「はぁ…気持ちいい…」
各部屋の中は少し賑やかで遊女やお客の笑い声…
歌う声や三味線の音…
きっとこの場に日頃の癒しを求めているのだろう…
飛鳥はどんな仕事でも大切なんだと改めて思う…
『おぉ!いたいた、どこにおったのじゃ』
「えっ…?」
いきなり手を引かれて先の部屋に連れて行かれる
お客の隣に座らされて徳利を持たされる
『探したのだぞ?ワシから離れるでない』
初老のお客は飛鳥をお気に入りの遊女と間違えたらしい。
それほど酒に飲まれていた。
「あの…私…」
『ワシはお前に会うためだけに生きておる…お前だけがワシの楽しみじゃ。ほれ、いつものように舞を見せておくれ』
音も歌も無いのに舞をせがまれる…