第58章 花魁ノ舞
この時代の舞とは少し違うかもしれないが、遊郭の中を思い浮かべる…
華やかな着物を着て舞を踊る…
お酌をしてお話をする…
日を跨げば夜の世界…
好んでここに来た人達ではないけど、真剣に芸に励む人達…
『信長様達は京へ入られた折にはいつもの所へ行かれると思います…あっ、日を跨いだりは致しませんよ?ふふっ…』
誰一人夜伽をする事はないが、贔屓にしている店に顔を出す。
「ふふっ、そうなんですね。皆んな大変だから…少しでも心休まればいいんですけどね。」
『贔屓の店に知ってるものがおります。滅多にない機会…飛鳥様も花魁の装いを試してみませんか?これは特別ですから…他言なさらぬよう…』
その言葉にぱぁっと笑顔になる飛鳥
「いいんですか?一度着てみたかったんです…一晩だけだけど、お手伝いさせてもらえれば嬉しいです…」
『遊女は仕事に誇りを持っております。飛鳥様はそちらも理解していただいてると思います故…』
にっこり笑って女将さんが言うと飛鳥が慌てて付け足す
「あの、皆んなには内緒で!驚かせたいんです…」
『ふふっ…わかりましたよ…』
楽しく話をして時間が過ぎると信長達が戻ってくる。
『飛鳥?おっ、大人しく待っていたみたいだな』
いつものように優しく頭を撫でてくれる秀吉。
猫のようにゴロゴロ秀吉の手に擦り寄る
「大人しく待ってました!」
『っ…』
飛鳥のあまりの可愛さに家康は絶句し顔を赤くする。
『なんだ家康、顔赤いぞ?花街はやめた方がいいんじゃないか?』
『別に…大丈夫です』
ニヤニヤしながら政宗に言われると、真っ赤なまま答える。
『そうか?あんまり無理するなよ?』
飛鳥に甘えられ優越感に浸る秀吉もニヤっと笑いながら呟く。
皆んなが飛鳥を好いている…
誰に奪われるかわからない…
必死にもなる。
『飛鳥』
「はい!」
信長に呼ばれ秀吉の元から離れる。
信長の目の前に座ると乱れた前髪を直される。
『乱れておる…』
「はい…っ…」
髪を直しながら耳元で呟く信長に飛鳥は頬を染める。
その様を見つめる武士達に不敵な笑みを浮かべる信長…