第54章 夢幻〜秀吉〜
向かってる間、飛鳥はキョロキョロしながら進む。
『ほら、ちゃんと前見て歩け。転ぶぞ?』
「あっ、うん」
慌てて前を見ながら歩き出す飛鳥
でもしばらくすると、またキョロキョロ…
そんな飛鳥が転ばないように、ちゃんと手を繋いで飛鳥を誘導する。
城下町の路地に入りしばらくすると廃民家に辿り着く。
「うわっ…」
改めて陽の光の下で見たそこは、今にも崩れそうなくらいの廃民家…
一月近くここに通ったかと思うとゾッとする。
入り口に手をかけると中には何もない。
『気を付けろよ?』
「うん」
飛鳥はまたもキョロキョロしてながら周りを見てる
『一体何を探してるんだ?』
「すごくすごく大切な物なの…」
嫌な思いをした場所までわざわざわ来るなんて、よっぽど大事な物なんだろう…
未来から持ってきた物か?
落とした物はわからないが、手を繋ぎながら一緒にあたりを見渡す。
『見つかったか?』
「うーん…多分ここにあると思うんだけどな…」
その後しばらく探したが見たあらず、空も茜色に染まり出す
『飛鳥…暗くなる前に戻らないとな』
飛鳥は残念そうに下を向いて頷き、扉に向かって歩き出す
「あっ!」
突然手を離し駆け出す飛鳥
繋いだ手が離れて、なんとも言えない不安感に襲われる…
『飛鳥!』
慌てて後を追うと、扉の隅でうずくまる飛鳥
何かを拾い満面の笑みで振り返る
「あったよ!秀吉さん!」
飛鳥が立ち上がり、その手の中にあるのもを見つめる
『それは…』
いつの日か飛鳥にあげだ帯飾り。
「秀吉さんから貰った物だから…見つかって良かった!」
両手に大事に持って微笑む飛鳥を思わず抱きしめる…
『飛鳥…ありがとな…』
「うん、帰ろっか」
廃民家を後にして城へ歩き出す。
まだ恋仲になる前に飛鳥にあげた帯飾り。
飛鳥には城の皆が何かしら贈り物をしている。
一緒に城下に出てみれば必ず新しい飾りをして帰るのだ。
それは秀吉だけではない。