第54章 夢幻〜秀吉〜
「秀吉さんいる?」
『飛鳥か?入って来い』
城で政務をしてると飛鳥が訪ねてくる。
「どうした?」
問いかけるが口ごもりなかなか話さない。
『ん?どうした?言ってみな?』
「えっと…あのね…時間が空いたらでいいんだけど…城下に連れてってもらえないかな?って…」
あれ以来、城下に二人で出かける事はなかった。
飛鳥も行きたがらないし、俺も政務が立て込んで忙しかった。
『なぁーんだ、そんなことか。よし!今から行くか!』
「えっ!今じゃなくていいよ!お仕事中でしょ?」
(飛鳥の頼み、聞かないわけないだろ?)
書物をしまい立ち上がって飛鳥の手を取る
「いいの?」
『当たり前だ』
いつもの様に頭を撫でるとふにゃっと笑ってくれる
(この顔…一番好きだな)
飛鳥の手を取り城下に向かって歩き出す
『ところでどこに行くつもりだ?』
城下までは行ったが行き先までは聞いていなかった
「うん、あの時の…民家に…」
あの時の…民家?
『それって…呪術の時のか?』
コクリと頷く飛鳥
なんで今更?
まさか…やっぱり忘れきれないのか?
『なんで…』
そこまで言って口ごもって仕舞う。
不安に思ってるのが飛鳥にバレるのはかっこ悪い…
「ちょっと…探し物なの…ごめんね?嫌だよね?」
悲しそうな顔で見上げてくる飛鳥
『いや…大丈夫だぞ、その代わりちゃんと手、離すなよ?』
繋いだ手をぎゅっと握る
「うん!」
飛鳥も握り返してくる
一抹の不安は残るが、あの民家に二人で向かった。