第48章 夢幻
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飛鳥…
…えっ…これって
俺と…結婚してくれ
…大和…
今日は記念日だからな…
だから今日言いたくて…絶対に幸せにするから
…はいっ…喜んで…
飛鳥愛してる
…私も愛してるよ
俺から離れんなよ?
…うん、離れないよ…何があっても…
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「…プロポーズの時の夢だ…」
記念日にプロポーズしてくれた大和。
あの後2人で時間を見つけては式場を見に行ったりしたよね…
私が学校を卒業したら…式を挙げる予定だったな。
いつもの縁側でぼぉっと空を見る。
あの日も満月だったな…
沈みかけた満月を見ながら思い出す。
「よし!今日も行ってこよ!」
朝の支度を済ませてから城下に出る。
その後ろを飛鳥に気づかれぬ様に光秀がつける。
飛鳥はフラフラと城下に行き、立ち止まると辺りをキョロキョロする。
すると廃民家に繋がる路地の入り口に祈祷師の姿。
突然呼ばれた様に振り返りふにゃっと笑って走り出す。
祈祷師は何も言わず飛鳥を見つめるが、飛鳥は微笑みながら一人で話し出す。
光秀からは飛鳥の独り言が、まるで会話をしてる様に見える。
『飛鳥には祈祷師が【大和】大和に見えてるという事か?』
気づかれぬ様気配を消してそのまま廃民家まで付ける。
朽ち果てる壁の隙間から中を覗くと
「今日はね…プロポーズしてくれた時の夢を見たよ!あの時は…」
ニコニコ話す飛鳥の前で禅を組んで座り祈祷を始める祈祷師。
飛鳥と祈祷師を囲む様に結界の様な物が張り巡らされ、祈祷を上げている間そこにはネズミすら近づかない。
祈祷中飛鳥はまるで受け答えをしてもらってる様に話をし、笑ったり怒ったりコロコロ表情を変えていた…。
祈祷が終わると
「そろそろ帰らなきゃだね…また明日大和!」
祈祷師にそう言って立ち上がり廃民家を後にする。
帰り道を歩く飛鳥は来た時よりも生気をなくしてる様に見えるが、顔は穏やかでニコニコ微笑んでいた。
光秀が身震いしてしまうほどゾッとする雰囲気を飛鳥は纏っていた。
城に帰りいつも通り仕事を始める飛鳥を確認すると光秀はその場を後にした。