第48章 夢幻
その頃秀吉は、いつまで経っても朝餉に来ない飛鳥を心配して、部屋の前まで来て居た。
『飛鳥?』
…………
返事が聞こえず昨日の事もあり、そっと襖を開ける。
そこには飛鳥の姿はなく、部屋もキレイに片付けられている。
『あいつ…どこに…』
部屋から飛び出て、急いで光秀と家康を探すと、薬部屋の前で家康と光秀を見つける。
『家康!光秀!!!飛鳥がいない!』
その言葉に眉を歪め
『秀吉!城下だ!』
事を察した光秀が城下に促す
三人は城下に向かいながら個々が調べた【大和】の情報について話す。
『【大和】と名乗る人物は安土には住んでない。宿泊簿を確認させても一つもなかった』
と光秀。
『こっちもなかったですね。怪しいものの情報はいくつかあったんで、後で報告しますけど。その中に【大和】って名前はなかったです』
走りながら家康も続ける。
『俺の方も何もなかったんだ。そもそも【大和】って奴が飛鳥と何があったのかもわからないからな…とにかく飛鳥に聞くしかない』
三人とも【大和】について何も知らない。
情報も入って来ない…
今は飛鳥を探す事を優先する事にした…
『飛鳥…あまり此処に居てはダメなんじゃないか?皆んな探しに来るだろ?』
大和にそう言われて、誰にも告げずに城を出て来た事を思い出す。
「そうだよね…。そろそろ行かなくちゃ…」
所々だが話している間に、大和も現代の事を話し出し、やはり大和だと確信する。
「でも…大和。まだ安土にいるの?此処にくれば会えるの?」
電話もメールもない時代。
相手が何処にいるかなんてすぐにはわからない。
『大丈夫。飛鳥が会いたいって思った時に、ちゃんと側にくるから…』
そう言って抱きしめられ、大和の暖かさを感じる。
「うん。」
後ろ髪を引かれる思いで民家を後にし、城下の中心まで歩き出す。
人混みに入った所で、腕を引かれた
『飛鳥!』
振り向くと鬼の形相の秀吉
「秀吉さん!家康に光秀さん?」
秀吉の後ろに不機嫌な顔の家康と能面のような顔の光秀。
三人がお怒りなのは一目見てわかった。
「あっ、あの。何も言わないで城を出てごめんなさい」
小さい声で謝ると、そっと頭を撫でられた
『とりあえず帰るぞ』