• テキストサイズ

【イケメン戦国】誘惑の華

第48章 夢幻



一口食べると口の中にふわっと甘味が広がって思わず顔が綻んだ。

『お前はそうやって間抜け面の方が合う』

不器用な優しさにほっこりしてお団子を食べた。

光秀は反物や小物を見たりと、なんだかんだ付き合ってくれた。
辺りが茜色に染まる頃、城に向かって歩き出す。

「光秀さん、今日はありがとうございました。」

丁寧にお礼をするとふっと笑って頭にポンと手を置かれた。

『良い顔になった。』

思わず顔が赤くなる。

(初めてかも…褒められたの…)

いつもの調子が狂いそうでら慌てて前を向いた時だった。

「えっ…」

思わず立ち止まる。

なんで…?
なんでここにいるの?

飛鳥が見つめるその先に…


「大和…?」


大和にそっくりな人が人混みに見える。

『飛鳥?』

急に立ち止まり、前を見て硬直する飛鳥。

『どうした?』

その問いかけにも答えず前を見据える。

「嘘…でしょ?…なんで…」

あれは確かに大和…

見間違えるはずなんてない。
あんなに幸せで、あんなに苦しんで、あんなに想った人。

『おい、飛鳥』

光秀が肩を叩き身体が揺れて意識が光秀に向く

『どうしたんだ?大和とは…』

そう言われ慌てて前を見るが、そこには大和はもういない。

「っ…、大和!」

名前を呼んで大和がいた方へ走り出す。

待って!
どうしているの…⁈

突然走り出した飛鳥に、慌てて光秀も追いかける。

どんなに走っても大和はいない。
でも見間違える事なんてあり得ない。

さっきのは絶対大和。

ブチッと音がすると飛鳥が前屈みで地面に膝をつく。

鼻緒が切れてしまい、それ以上走れない。
地面にへたり込んだ飛鳥はその場から動く事が出来なかった。


追いついた光秀が飛鳥を見ると、目に涙を溜めて前を見据えたまま呆然としている。

はだけた膝と地面についた手からは血が滲み、鼻緒が切れた草履は飛鳥の少し後ろに転がっていた。

「…やま…と…」

名前を呼ぶ飛鳥の目から溜まった涙が次から次へと零れ落ちる。

草履を拾い飛鳥を横抱きに抱き上げ、光秀は歩き出す。

光秀の首に腕を回し、しがみ付いた飛鳥からはすすり泣く声がした。

城に入っても泣き止む事がなかった。
/ 297ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp