第48章 夢幻
「はぁ…なんで今更なんだろ…気持ちの整理はついてるのに…」
心の声が口から出てる事にも気付かない。
部屋に居ても一人だし考えちゃうのも嫌…
誰か誘って城下でも行こうか。
そう思って城の中をウロウロしてみる
あまりにキョロキョロしながら歩いていたせいで、廊下の角で誰かと当たってしまう
「わっ!ごめんなさい!」
慌てて謝って顔を上げると
『間抜け面にクマか…』
光秀さんにそう言われ、出会ったのが光秀さんって事に少し肩を落とす
「はぁ…」
思わずため息が出る飛鳥を見つめ驚く光秀
『珍しく言い返してこないのか』
いつになく真剣に聞き返され、ぼぉっと光秀の顔を見る
「光秀さん…暇ですか?」
何処か気の抜けた顔で言われた光秀は
『暇の様に見えるのか?』
飛鳥がアタフタするのを期待して言ってみるも
「暇でないならいいです…では…」
そう言ってその場を後にしようとする飛鳥。
『待て、付き合ってやってもいいぞ』
思わず呼び止めて呟く。
予想外の返事にびっくりしたものの、背に腹は変えられない。
「あの…じゃぁ城下に連れてってもらってもいいですか?甘味食べたくて…」
何か理由を付けないと、また断られそうで甘味を理由にする
『わかった。ご馳走になってやろう』
いつもより優しくからかってくる光秀
(いつもより優しい気がする…気を使わせちゃったかな…)
そう思いなるべくいつものように返す
「ご馳走するなんて言ってませんよ!」
光秀は飛鳥の手を引きながらククッと笑い城を後にした。
光秀さんと城下に出ると、いつものように賑わってて、あちこちから良い匂いがしてくる。
「わぁー!」
考え込んでいた気持ちも城下の雰囲気に薄れ、飛鳥はキョロキョロしながら周りを見渡す。
『いつにも増して間抜け面になったな』
隣からいつもの含み笑いが聞こえ、睨みつけてもどこ吹く風…
(光秀さん誘って失敗したかも…)
でも一人で居れる気にもならなかったし…と考えながらふらっと甘味屋の前で脚が止まる。
『みたらし団子二本』
「えっ?」
飛鳥が何も言わずとも光秀は飛鳥の好物を頼む。
『ほら。食べろ』
飛鳥が差し出されたみたらし団子を手に取ると、もう一本を口に運んだ。