第44章 夜も日も明けない続〜家康〜R-18
こんな穏やかな日がもう一度訪れるなんて思えなかった。
朝になっても目を覚まさなかった飛鳥。
あの時飛鳥が居なくなってたら、今ここに俺も居ない。
「家康、お待たせ!」
振り向くと白地に山吹色と桃色の花が散りばめられている着物を身にまとった飛鳥。
それがまるで俺と飛鳥を表してるみたい。
『その着物』
「少し前に作ってたんだけど、なかなか着れる機会がなくて…この花、私と家康みたいでしょ?」
ふにゃっと笑いながら見つめられ、思わず顔が赤くなる
『あ…良いんじゃない』
しばらく封印していた天邪鬼が顔を出す。
それでも飛鳥はニコニコして家康を見つめる
「褒めてくれた!嬉しい!」
普通ならこれ褒められてるって思わなでしょ。
周りから見たら興味なさそうとか言われるだろうし。
でも飛鳥はちゃんとわかってくれる。
『行くよ』
赤くなってる顔を見られないように、飛鳥の手を引いて城下に向かい歩き出した。
なるべく飛鳥が人混みで疲れないように、歩きやすいように、手を引いて一歩前を歩く家康。
「家康!」
飛鳥に呼ばれるたびに立ち止まり一緒に店の中を見たりする。
ずっと城の中だったし、体力だってそんなに戻ってない。
心配する家康をだが、飛鳥はあっちにこっちにフラフラしながら楽しんでいる。
こんなに楽しそうだと帰ろうなんて言えないじゃん。
「あっ、これ可愛い!」
飛鳥が手に取ってるのは桜の花が象られている簪。
飛鳥に良く似合ってると思う。
『貸して』
簪を取ると、飛鳥の髪に飾る
「どう?似合ってる?」
ニコニコ笑いながら聞いてくる飛鳥。
『これ、貰って行くよ』
『毎度!』
似合ってるに決まってるでしょ。
答えるのも恥ずかしい。
その代わりそっと飛鳥の頭を撫でる。
何も言わない家康に、一瞬暗い顔をした飛鳥だが、買って貰って頭を撫でで貰うと、【似合ってる】と思ってくれてるとわかり表情が明るくなった。