第42章 夜も日も明けない〜家康〜
家康が戻った日の夕刻、信長達も城に戻る。
飛鳥を案じ休ます馬を飛ばしてきた。
飛鳥の部屋の前に着くと、秀吉が部屋の前に座って俯いている。
秀吉が部屋を出てから、部屋の中から家康の飛鳥を呼ぶ声が止むことがなかった。
『飛鳥は』
信長が秀吉に声をかけると
『ご無事のご帰還何よりでございます…飛鳥は…今夜を乗り越えねば…』
言葉が続かない。
後ろで聞く政宗達も顔を歪ます。
『入るぞ』
そう言って信長が飛鳥の部屋へ入る。
そこには飛鳥の髪や頬を撫でながら、優しく名前を呼び続ける家康。
目は赤く腫れている。
『家康』
声をかけると家康が顔を上げる。
『広間に行きます』
それだけ言ってまた飛鳥に視線を戻る。
信長は何も言わず部屋を出ると、秀吉達に皆を広間に集めるように伝え歩き出す。
広間に集まる家臣達の顔は皆暗く、最後に家康が入ってくると
秀吉が事の事情を話し出した。
全て聞き終わると飛鳥の状況を家康に尋ねる。
『俺が城に着いた時には薬師が処置をしていました。
ただ合った解毒薬ではなかったので、直ぐ作り飲ませました。
話によれば毎日少しづつ飲ませていたようで、倒れたのは昨日の昼。解毒薬を飲ませるまでに丸一日ありました。
この後何度か解毒薬を飲ませますが、今夜乗り越えられなければ…飛鳥は…命を落とす事になると。
飛鳥の自己治癒力次第です。』
認めたくはない。
だけど…認めざる終えない。
『もういいですか。飛鳥の側に戻ります。』
家康は急ぎ飛鳥の部屋に向かった。
『くそっ!』
政宗が畳を叩く。
『飛鳥様…』
三成が涙ぐみながら俯く。
光秀も口を開くことはないが顔を歪めている。
『御屋形様。飛鳥の部屋の前におります。何かあれば直ぐお知らせいたします。』
秀吉も広間を出る。
『何かあれば知らせろ』
信長の言葉に強い怒りと悲しみが含まれていた…