第42章 夜も日も明けない〜家康〜
必死に馬を走らせ城に戻ったのは、昼に近くなった頃だった。
取り返しがつかない事になっていないよう祈りながら飛鳥の部屋へと走る。
『飛鳥!!!!』
部屋に着くと褥に寝かされた飛鳥。
傍に俯く秀吉と忙しなく、動く薬師…
飛鳥の元に駆け寄り、頬を触る
『冷たい…』
命の灯火が消えかかってる。
薬師が秀吉から聞いた劇薬の種類と解毒方法を伝える。
『今できる最善の処置は致しましたが、私に解毒草を取揃えるのは出来ませぬ。』
(全て薬部屋にある薬草で作れる)
『飛鳥待ってて!』
飛鳥に語りかけて部屋を出る。
薬部屋に向かい数種類の薬草を擦り合わせ解毒薬を作る。
秀吉さんが部屋の前で今までの経緯を説明してくれた。
『家康…俺が付いていながら…すまない』
見抜けなかった秀吉が弱々しく呟く
『巧妙な手口です。俺も気付けなかった。秀吉さんは悪くないです。それより、早くこれを…』
出来上がった解毒薬を手に飛鳥の部屋に戻り、意識の無い飛鳥を抱き起こし、口移しで飲ませる。
少しでも身体に入るように少しづつ何度も何度も…
時間をかけて解毒薬を飲まし終わる。
直ぐに効果が出るわけではない。
多分今日乗り越えられなかったら…
考えたくも無い。
だけどそれが現実。
『家康…』
全ての処置を終え思わず放心している家康に、秀吉が声をかける
『出来ることはしました。今日乗り越えられなかったら、多分…無理です。』
家康の淡々とした物言いに、
『無理って!お前なんでそんな冷静でいられるんだ…』
そう言って口をつぐむ
『冷静なんかじゃない…こんな飛鳥見て冷静なわけないでしょ!』
そのまま横たわる飛鳥を抱き締める
『俺が早く間者に気づいていれば!もっと飛鳥の側にいれば!俺が!俺が…』
自分に対しての苛立ち
あの時違和感に気付いていれば、防げたかもしれない
後悔しか残らない
『飛鳥…ごめん…守れなくて…ごめんっ…』
飛鳥を抱き締め肩を震わせる家康
秀吉は静かに部屋を後にした。