第42章 夜も日も明けない〜家康〜
凛は地下牢で大人しく座る。
飛鳥をもう一日放っておけば、確実に葬れた…
だが出来なかった。
思わず声を出してしまった。
(私にも良心が残っていたのね…)
劇薬だって、家康が発った後に何かに混ぜて一気に飲ませれば脚が着く前に逃れられたかもしれない。
もちろん家康を好いてしまったから…と理由はあるものの、飛鳥に接し続け人の良さを知ってしまい、食事に入れる量も予定の半分にしてしまっていた。
凛は鬼にはなれなかった。
『凛…』
その声に顔を上げる。
秀吉が悲しそうな目でこちらを見る。
『何故こんな事を…』
凛は死を覚悟し、今までの事を話す。
自分は貧しい暮らしをしてきた事。
大名に見染められれば側室にして貰える事。
その為に城に間者として忍び込んだ事。
家康を慕ってしまった事。
飛鳥と接するうちに、鬼になりきれなかった事。
劇薬の種類、解毒の方法。
全て打ち明けた。
『秀吉様…命を持って償わせて頂きます。』
そう言って頭を下げる。
『凛…残念だ。』
そう言って地下牢を出て行く。
残された凛は騙し続けた安土の皆んなに懺悔をし、飛鳥の無事を祈る。
そして家康への想いを断ち切った。
もう…どうなっても構わない。