第42章 夜も日も明けない〜家康〜
『凛だと?』
【凛】と聞き大名が口を開く
『その名前を知っているという事は、城には入っていたのだな…薬師の娘だ…薬でも盛って上手くやると思ったが…使えない女子だ…』
『薬師…』
間違いなく凛だ。
彼女の親が薬師だと言ってた。
『間違いなく…』
そう呟く。
『彼奴は行く宛などない。だが、貴様らがここいるという事は…今となっては無意味だが、上手く近寄れる寵姫がおったのだな…』
不敵に笑う大名。
寵姫…。
飛鳥しかいない…。
その場の全員が飛鳥を思い浮かべる。
『城に迎え』
光秀の声に動く忍の影。
唖然とし、立ちつくす家康に
『家康!行け!』
信長の荒々しい低い声。
咄嗟に馬に飛び乗り城に向かう。
無我夢中で馬の腹を蹴りながら違和感の正体に気付く。
家康専用の薬部屋は劇薬もある。
誰も手を出せない様に数日に一度、悪用されぬ様引出しを交換する。
部屋の光景を思い浮かべる。
ある引き出しがほんの少しだけ傾いていた。
その引き出しの中は確か劇薬。
建て付けが悪い引き出しは時間が経つと少しだけ傾く。
傾かない様に閉めるにはコツがあり、それは家康だけが知っている。
凛
薬師
違和感
飛鳥…
全てが重なった。
(くそっ!なんで気付かなかった!)
家康は城までの道のりが時が止まった様に遅く感じた。