第42章 夜も日も明けない〜家康〜
いつもの様に昼餉に薬草を淹れ飛鳥の元に行く
『飛鳥様、凛です。昼餉をお持ちしました。』
……
返事がない。
凛はピンと来た。
毒が回ったのだろう。
周りを見渡して人気がないのを確認すると、部屋に入る。
畳の上で倒れる飛鳥。
小さな声で声を掛けるが、意識はほぼ無く苦しい息遣いのみ。
やっと任務を遂行できる。
飛鳥をそのままにし、誰にも気付かれぬ様部屋を出る。
毒が回りきるまで…
家康が安土に戻るのは数日後。
その頃には手遅れになる筈。
今知られ解毒されれば今までの苦労が水の泡だ…
女中達には飛鳥は疲れが取れぬから横になっていると。
しばらく部屋に行かない様にと告げる。
女中達は今までの凛の仕事振りに絶大の信頼を置いていた。
家康付きになり、飛鳥付きに抜擢するなど異例。
凛の言葉をすんなり受け入れた。
その日飛鳥の部屋には誰一人近づく事はなかった…
その頃、家康達は謀反を起こした大名を始末にかかるところだった。
『あんた。チョロチョロ逃げ回って往生際悪い』
大名が彼方此方に隠れるのを探すのに少し手惑い、苛立ちを隠せない家康。
捉えられ縄で繋がれた大名が跪きこちらを睨む。
『最期に言い残す事はないか』
早く斬り倒したい政宗が大名に問う
大名は睨みながら吐き捨てる様に
『くそっ!彼奴がしくじらなければ…斬り捨てられるのは貴様、信長公であったのに!』
その言葉に政宗は首をかしげる
『どういう事だ』
光秀が切先を大名の喉元に付ける
『女中が行かんかったかね…気立ての良い女だ。信長公か側近武将、その寵姫を抹殺しろと言ったのに。怖気付いて逃げたのだな…』
『女中…?』
三成が考える
『お凛…まさか…お凛さんでは…?』
三成から出た名前に家康は驚きを隠せなかった…