第42章 夜も日も明けない〜家康〜
家康が行ってから身体の調子が良くない…
なんだか怠くて、喉が凄く乾く。
でも皆んなに心配はかけたくないし…
秀吉さんにバレたら褥から出してもらえなそうだし。
動けないほどではないから我慢していた。
『飛鳥様、夕餉をお持ち致しました。』
「ありがとう。」
凛さんが運んで来た夕餉を見てもお腹が空かない…。
あまり食欲が出ない。
『飛鳥様?如何致しました?あまり食欲が湧きませぬか?』
体調が悪い事を凛に気付かれてしまう。
「うん…疲れちゃってるのかな?」
そう言って箸を置こうとすると
『飛鳥様…少しでも口をお付けにならないと倒れてしまいます。飛鳥様がお倒れになったら、凛は家康様にお叱りを受けてしまいます故…せめて汁物だけでも…』
確かに倒れたら秀吉さんが文を出してしまう。
凛にも迷惑がかかる。
「凛さんは良くしてくれるのに、家康に怒られちゃったら嫌だもん。汁物だけ頂くね?」
なんとか汁物を口にして、今日は湯浴みを辞めて早目に褥に入る。
(もうすぐ家康も戻るもんね…)
家康の事を考えながら眠りについた。
眠りについた飛鳥を確認してから、凛も部屋に戻る。
あの日作った薬草の包みを懐から出す。
(効果が出た…後はこの残りを飲ませば葬れる…。家康様をこの手に…)
顔が緩むのを抑え包みを懐にしまう。
飛鳥と接するようになって、飛鳥を心から憎むようになったわけではない。
むしろ、屈託のない笑顔、気遣い、何も知らないとはいえ自分の恋路を応援してくれる心の優しさ…
もし…普通に出会っていたら…
そう思えてしまう。
だけど…
自分の身を考えないと生きては行けない。
織田軍が勝てば飛鳥を葬った後家康を癒せる。
織田軍が負けても家康だけ逃す事や、ダメでも大名の側室として生きていける。
乱世は女子の人生をも狂わせる。
だから…飛鳥様…ごめんなさい…