第42章 夜も日も明けない〜家康〜
しばらくすると、薬部屋の前に人影。
あたりをキョロキョロしてから、部屋の中に入って行った。
薬棚を見上げ目的の薬草を一発で探し当て、そっと懐にしまいても部屋を出てると仕事で出払ってる女中部屋に入る。
薬部屋から持って来た薬草を、細かくすり潰して小袋に分ける。
出来上がった薬を見て笑うのは
…凛。
『やっと…やっとよ…』
凛は謀反を企む大名から送られた間者だった。
お絹が城を開けると情報を得て、安土に忍び込んだのだ。
周りに疑われないために、必死で女中の仕事をこなし安土の信頼を得た。
それもこれも信長討伐の為。
凛が受けた命は【信長もしくは側近武将、その寵姫の暗殺】
どれを暗殺しても、織田軍の士気は下がるり、時間も稼げる。
信長は日頃一人になる事はあまり無く、夜も睡眠をあまり取らない。
秀吉と政宗に近づいたが、ペラペラ話しかけられ口を滑らしてはならない為距離を取った。
光成はそもそも城に居ることが少なく、三成は書庫に篭り、凛が何度も書庫行くとなると警戒されかねない。
そこに来た家康。
寡黙で多くを語らず、凛に興味もあまり示さない。
凛にとって側に居やすい。
しかも安土城全員に大切にされ、信長と側近武将達の寵愛を受け、家康と恋仲の飛鳥。
飛鳥を滅すれば家康は使い物にならなくなる。
安土の士気も下がり、信長、側近武将も動揺するだろう。
凛にとって飛鳥は重要人物である。
飛鳥が居なくなれば安土の損失はでかい。
ただ…一つだけ、間者の凛の心に有ってはならない感情が芽生える。
任務を遂行するために近づいて居たはずの家康。
小さな大名の一女中。
忍でもなく、ただ謀反を企てた大名に送られた身。
大名もそこまで期待してない事も分かってはいた。
ただ大名に見染められたかった。
その為だけに安土に入った凛。
上手くやれば側室にしてもらえるかもしれない。
そんな凛が任務の為とはいえ、尽くした相手に恋心を抱いてもおかしくはなかった。
飛鳥を葬まれば家康の側に居られる。
凛から見ても安土の勢力は大名とは比べ物にならない。
大名は負けるだろう。
ならば飛鳥だけを葬り、時間稼ぎをするだけでいいはず…
そもそも安土もすでに動いている。
凛は飛鳥を葬ることだけを考える様になった。