第42章 夜も日も明けない〜家康〜
部屋で食事をして、薬作りに戻る。
あらかた出来上がると伸びをしてフッと息をつく。
(飛鳥が足らない。湯浴みして部屋に行こう…)
そう思っていると
『家康様、湯浴みの用意が出来ました。』
『あぁ…わかった』
家康の心を読むかの様に凛が声をかける。
襖を開けると膝をつき平伏す凛は
『空いた膳もお下げいたします。』
家康が膳を下げろと言う前に行動を起こす。
(なにこの子。まるで心が読めるみたい)
家康付きの絹も良く気付いてくれる女中だった。
同じ様に行動する凛に、家康は正直関心していた。
その頃飛鳥は落胆していた。
家康に夕餉をを届けようと部屋の近くまで行くと、女中が膳を持って家康に声を掛けていた。
(あっ、先越されちゃった…)
そのまま食事場に戻り、自分も食事をしていると、家康の所にいた女中が戻ってくる。
「あっ、あの!」
思わず声を掛けると
『これは飛鳥様でございますね?本日より家康様付きの女中になりました凛と申します』
深々と挨拶されて、慌てて飛鳥も頭を下げる
「あの、お絹さんは?」
絹が城に居ないのを知らない飛鳥
『お絹さんは今城にはおりません。戻ってくるまで私がお世話をさせて頂きます。』
ニッコリと笑う凛に飛鳥は
「そうだったんだ。家康をよろしくお願いします」
そう言って笑顔になる。
凛に挨拶した飛鳥は部屋に戻り、お針子の仕事を始める
しばらくして、ふと家康を想う。
(湯浴みまだだろうな…用意しようかな…)
きっと薬作りに没頭してるだろうと思い、女中に家康の湯浴みの用意を…と告げる
『家康様の湯浴みの準備は出来ております』
「あっ、そうですか…わかりました。」
きっと家康が頼んだのだろうと、湯浴みの支度が出来た事を告げに部屋まで行こうとする。
そこには既に凛がいて、湯浴みの準備と言ってた。
踵を返し部屋に戻る。
(はぁ…また凛さんに先越された…よく気付くし、笑顔も可愛くて、とっても良い子だよね…)
そう思ったものの、飛鳥が家康に世話を焼こうとしても先を越されてしまい、落胆するしかない。
「はぁ…家康に何もしてあげれてないな…」
部屋でぼぉっとしていた…