第42章 夜も日も明けない〜家康〜
この子何で俺が機嫌悪いかわからないの?
城に来てからいろんな奴にかまわれて、ニコニコして。
全然側に居らんない。
飛鳥を部屋に連れ込んで自分の前に座らせる
「家康…?」
不安げに見つめる飛鳥
『わからないの?』
そう言って飛鳥を見つめる
飛鳥は下を向いて考えてる
『城に来てから全然側に居ない。隣にいろって言ったよね?』
飛鳥がハッとして顔を上げる
『気付くの遅い』
「ごめんね?お針子部屋でお仕事する時に以外は一緒にいるね?」
飛鳥を抱き寄せぎゅっと力を込める
『あんた…鈍感だから。』
ただヤキモチ妬いてるなんて知られたくない。
側に居ないだけで不安なんて。
かっこ悪いでしょ
「家康…?苦しい…よ?」
『我慢して』
そんな俺の腕の中で頷く飛鳥が、憎らしいくらい愛おしい。
『今夜から飛鳥の部屋で寝るから。わかった?』
「うん」
しばらく抱き合った後飛鳥は自室に戻っていった。
薬作りに没頭していると
『家康様、よろしいでしょうか』
『あぁ、入って』
部屋に女中が入ってくる。
『何』
顔を見ずに告げると
『お絹さんが城を離れる間、家康様のお世話をさせて頂くことになりました。凛と申します。』
お絹とは家康付きの女中。
家康が安土に来てからずっと付いてくれていた母と年齢の近い女中。
言わば安土の母の様な人。
絹はしばらく前に体調を崩して城を開けていた。
家康は絹を気に入っていたので、体調が戻り次第城に…と、絹を家に帰していたのだ。
絹の代わりが付くとは聞いていた。
『わかった。下がって』
『はい。失礼致します。』
凛は頭を下げて部屋を出た。
思った以上に若く、自分や飛鳥と同じ様な年だろう。
飛鳥を不安にさせない様、絹が帰ってくるまでは深くは関わらない様にしようと思った。
薬部屋に籠っている家康に、凛が夕餉を持ってくる。
なるべく多く作らなくては行けない。
食事場に行くのも煩わしい。
そう思っていた。
『家康様、夕餉をお持ちしました』
『中に置いて』
失礼しますと言うと凛が部屋に入ってくる。
作業の邪魔にならぬ様、隅に膳を置く凛。
置いたら直ぐにその場を立ち去る。