第36章 生涯共に…〜政宗〜
お酒の力も借りて、普段言えないような事も口からスラスラと出る
『はぁ?生意気な女ね!政宗が片目を失った時だって、父上様がお亡くなりになった時だって、側に居たのは私よ!あんたみたいな小娘に政宗が本気になるなんて、ある訳ないわ!』
「確かに政宗が辛い時に一緒には居ませんでした。だけど、こらから政宗がもし辛い事があった時は、政宗の側に居たいって思ってます。辛い事も楽しい事も2人で分かち合いたいんです。」
なおも引き下がらない飛鳥
『っ!ふざけんじゃないわよ!』
反論されて激怒した愛姫は飛鳥の髪を掴み頬に平手打ちをする
バチンっ!!!!
「っ!痛っ…」
『あんたに政宗は渡さないって言ってるでしょ⁈一人でおとなしく安土に戻りなさいよ!!!!』
何かの音がした後に荒げた声が聞こえた
『愛姫?…飛鳥!』
政宗は飛鳥の危険を感じ上座から慌てて降りて襖に向かう。
その光景に驚いて小十郎も駆け寄る
襖を開いた瞬間…
飛鳥の髪を掴んだまま声を荒げる愛姫と、頬に手を当てながら歪んだ顔をする飛鳥
何があったかはすぐに察した。
『飛鳥!』
政宗の声に怯んだ愛姫が髪を離す
飛鳥に駆け寄ろうとすると
「待って!」
制されて立ち止まると、飛鳥が立ち上がり愛姫をしっかり見据える
「愛姫さん…愛姫さんの気持ちは凄くわかります。政宗の事大事で凄く好きなんだよね?」
みるみる愛姫の目に涙が溜まる
「素直になれなくてこんな風にしちゃったけど、政宗を大切に思ってる事は、私…わかったよ?」
『あんたに…あんたに何かわかるのよ…』
涙が零れ落ちる愛姫を、そっと小十郎が支える
「同じ人を好きだから…わかるんだよ…。愛姫さんが政宗の事本当に好きなのがわかるの…」
飛鳥も目を潤ませる
「でも…私も政宗が好きなの。他の誰かじゃダメなの…この国が戦のない平和な国になるのを政宗の隣で見たいの。平和が未来に繋がるように…だから、ごめんなさい。政宗の隣に居させてください」
精一杯の気持ちを込めて…
愛姫が影ながら政宗の側で、支えようとして居た事がわかったから。