第36章 生涯共に…〜政宗〜
奥州では穏やかに過ごしていた飛鳥だが、愛姫の【何も知らない】の言葉が頭から離れない
モヤモヤする気持ちはあったが政宗を信じてるから…そう思ってなるべく考えないようにしていた
『飛鳥?今日は宴があるからな』
「うん…わかったよ」
(宴には政宗が贈ってくれた打掛を着よう)
安土と同じように、奥州の皆んなも優しくしてくれて…
お酒が大好きで、よく笑っていて…
ここに政宗と住んだら…毎日楽しいだろうなっと思いだしていた。
宴の席
楽しい声が響き、美味しいご飯と美味しお酒に舌鼓をうつ
『飛鳥様、どうぞ』
さっきから家臣の人達がお酌をしに来てくれる
政宗が呑めないから、なるべく応じてあげたくて必死に盃の中を空にする
皆んな悪気はなくて、私が呑むと凄く喜んでくれてる
『おい、お前ら飛鳥に飲ませ過ぎだ』
家臣を制する政宗もどこか嬉しそうで…
でもさすがにちょっと酔っ払って来た
「政宗、ちょっと風に当たってくるね?戻ったらまた皆んなのお相手するし、待ってもらって?」
『1人で大丈夫か?』
「うん!大丈夫!」
広間を出ると優しく吹く風が心地いい
目の前の縁側に座って月を見る
「あぁ…気持ちいい…」
しばらくぼぉっとしていると
『あらお姫様』
その声にビクッとする
「あっ、愛姫さん…」
横に立つ愛姫を見上げる
城下で会ってから、政宗により一層心配されてずっと側にいた飛鳥。
1人になる事はなく、まさか今こうやって2人きりになってしまうとは思わなかった。
『貴方…ずっと政宗の側にいて、政務の邪魔してるの?』
「そんなつもりじゃ…」
そうは言ったが、どんどんと愛姫はヒートアップしてくる
『安土にだっていい男なんて山程いるじゃない。わざわざ奥州まで来て…どうして政宗なのよ。私は小さい頃から政宗と一緒にいたわ!後から横取りするような真似して…政宗は私の物よ!あんたなんかに渡さないわ!』
声を荒げる愛姫に圧倒されてしまうが、ここで怖気付いてはいられない
「政宗との年月は愛姫さんよりもずっと少ないです。でも…そんなこと言われて、わかりましたとは言えません。私だって政宗の事は大事に思ってるし、離れるつもりなんてありません!」