第36章 生涯共に…〜政宗〜
『飛鳥よく似合ってる…キレイだな』
飛鳥は頬を染めながら
「いきなり連れてかれて、政宗からって言われて…ビックリした」
いつものように口を尖らせながら言う飛鳥
「でも…その羽織着てくれて嬉しい」
飛鳥が作ってくれた羽織
これは大事な宝だ
『飛鳥が作ってくれたからな』
飛鳥はニコニコしながら
「色、お揃いだね」
(可愛いな…)
そのやり取りを家臣達は微笑ましく見つめる…
が。
『愛姫様が、参りました』
その声に一瞬にして静まり返る
隣でどこか緊張している飛鳥の手を握り
『あぁ…入れ』
開け放たれた襖からとても可愛らしい姫が現れる
『政宗!』
キラッと笑った愛姫が、飛鳥を見て顔を歪める
ズカズカと政宗の前まで歩いてきて目の前に座り
『帰るの遅いじゃない!しかも…女なんか連れてきて!』
顔に似合わない物言いに飛鳥と繋いでいる手がピクンと振動する。
『愛姫様…落ち着いて…』
そう言う小十郎をキッと睨み
『政宗、誰なの!その女!』
なおも声を荒げる
(はぁ…こいつは変わってねぇーな)
大きなため息をついて
『飛鳥だ。織田家ゆかりの姫だ。』
織田家と聞いて
『あら、そうでしたの?それは失礼致しました』
打って変わって丁寧に挨拶をする
『それと…俺と夫婦になる女子だ』
その言葉に愛姫は目を見開き
『今…なんて…』
見る見る鬼のような顔になる
『生涯共にする女子だ。』
凛とした声で言う政宗に飛鳥を一瞬睨み
『そう…そう簡単にうまく行くかしら?』
意味ありげに言いながら政宗を見る
居ても立っても居られなかった小十郎が、成実と小十郎の間の席に愛姫を案内すると、やっと飛鳥の手が緩む
「まっ、まさ…むね…」
やっと絞り出した声に、飛鳥の頬を撫でながら
『怖い思いさせただろ?すまねぇな…あいつは昔からあんな感じだ。』
「そっ、そっか…」
呆然とする飛鳥に申し訳なさを感じながら
『飛鳥…俺の側から離れるなよ』
「う…うん…」
その意味を理解して飛鳥はどうにか呟いた