第36章 生涯共に…〜政宗〜
「政宗…ありがとう」
頬を染めて飛鳥が呟く
『お前が嫌って言っても離さねぇって言ってるだろ?』
ただ、愛姫は確かに厄介だ…
なるべく飛鳥から離れないことを静かに誓った
宴の席
青葉城の広間には家臣がひしめき合い酒を酌み交わしている
飛鳥はと言うと、政宗と部屋を出ようとしたら小十郎に呼び止められる
『飛鳥様はこちらに』
『待ってるから』
そう言われ政宗と離れる
連れていかれた先には水縹色でキレイな刺繍が入った打掛
『殿からです。着替えたら広間に行きましょうね』
小十郎から優しく言われたと同時に女中さん達に取り囲まれ、あれよあれよと言う間に着替えさせられる
薄く化粧をしてもらうと女中さん達から歓喜のため息が聞こえる
『飛鳥様…おキレイでございます』
支度が終わり小十郎の元に行くと一瞬ビックリした顔をして
『殿がお慕いするのがよくわかります。では参りましょう』
そう言って出された手を、おずおずと掴み歩き出す。
広間の前
『殿、参りました』
その声に家臣達はシンっと静まり返る
襖が開くと家臣達がいる上座に政宗
『飛鳥…おいで』
家臣達の間を少し気まずい思いで歩きながら政宗の目の前に座る
『そこじゃないだろ?』
そう言って上座の政宗の隣をトントンと叩く
改まった格好の政宗に緊張したが、以前飛鳥が作った羽織を着てくれていて少し安心する
そっと政宗の隣に座り前を見据えると、家臣達か一斉に飛鳥を見つめていた
(きっ、気まずい…)
視線が痛くて政宗を見やると、飛鳥を見て微笑みながら家臣達に向き直り
『織田家ゆかりの姫飛鳥だ。皆の者、俺はいずれ飛鳥と祝言をあげる。頼んだぞ』
その言葉を聞き静まり返っていた筈の家臣達が歓声をあげる
「ちょっ、政宗…。あのっ、飛鳥です。よろしくお願い致します」
信長の隣で微笑む時のように家臣達に挨拶をした
『よーし!宴だ!みんな呑めよー!』
いつもの政宗に戻り声をかけると一斉に騒ぎ出した…