第34章 迷子
領地内にある森の中に立派な御殿がある。
鷹狩りにそこを利用することが多いらしい
「秀吉さん…ここ鷹狩り用ですか?」
『あぁ、御屋形様は数日お泊まりで鷹狩りする時もあるからな』
「はぁ…」
開いた口が塞がらなくなるほど、豪華…
(お掃除大変そう…)
『ぼぉっとしてないで。邪魔』
後ろから来た家康に声をかけられ立ち止まっていることに気付く
「あっ、ごめん!」
部屋の中も豪華で十分住める程。
今だに立ち尽くしていると信長がキレイな鷹を手に横に立つ
「うわぁっ!」
間近で見る鷹は思った以上に大きくて、でも信長の様に凛々しい
『飛鳥参るぞ』
そう言って鷹を離すと森の中にどんどん歩いて言ってしまう
「あっ、待ってくださいっ」
信長を見失わない様に必死で追いかける。
追いかけているはずだった…
「はぁ…」
迷った。
見事に見失った。
「信長様〜!」
叫んでも周りは静かで、自分の声だけが響く
(もー…信長様足速いよ…来た道もわからないし…)
キョロキョロしながら歩いてると何かに躓いて、転がってしまう
(痛っ…もぅ…皆ん何処にいるの?)
足の痛みと独りぼっちの不安
どうにか足を引きずって歩く
すると目の前の森がひらけてきた
そこに一歩踏み出すと目の前が黄色一色になる
「わぁ…タンポポだ」
一面のタンポポが風に揺れている
(凄い…こんなキレイなところあったんだ…)
少し歩いて座り込む
「迷子中だけど、こんなキレイなところ見つけられてラッキーだ」
タンポポの中に1人で佇んで太陽を浴びる
飛鳥はしばらく動くことができなかった