第30章 最愛の人〜秀吉〜
政宗が城に戻るとちょうど飛鳥が帰るところだった
『飛鳥』
「あっ、政宗!今帰り?」
無邪気に聞く飛鳥を、腕を引き抱き締める
「ちょっ!ちょっと!政宗?」
政宗の腕の中で身動ぐ飛鳥に
『飛鳥…秀吉なんかやめろ…やめて俺にしろ』
見上げると熱が篭る瞳で見つめられ
「急にどうしたの?なんで…?」
政宗の胸を押し距離を取る
『あんな…あんな人たらしの何処がいいんだよ…俺ならお前を不安になんかさせない。お前を泣かせたりしない。』
そう言った政宗はいつになく真剣で…
そんな政宗を見て、何かを知ってる…秀吉の事で何かあったのだと悟る
それがきっと月華の事だと…
「政宗…?何かあったんだね…それは…月華さんの事だよね?」
聞きたくない。
知っていたとしても聞きたくない…
月華と再会してから…
消えてしまいそうだと言われた日から…
何かあるのだとわかっていた…
だから誰にも聞かずに過ごして来たんだ。
聞いたら秀吉が離れてしまいそうで…
でも今の政宗はとても真剣で、聞かずにはいられなかった。
『さっき…城下で秀吉と月華がいた。』
(あぁ…やっぱり…)
『飛鳥…月華は秀吉が昔想ってた人だ…』
なんとなく予想していたから…
だけど凄く悲しい…
『酒の席で一度だけ秀吉から女の話が出たんだ…それが月華だ。』
今の飛鳥は、ただ政宗の言葉を黙って聞くしかなかった…