第30章 最愛の人〜秀吉〜
月華…
聞いたことある名前。
随分前、酒に酔った秀吉が言ってた名前?
(なんだ?月華…なんでこの名前聞いたんだ?)
飛鳥が月華と話をして居る間、政宗はずっと考えてた…
いつかの戦後の宴の席で聞いた気がする。
嫁いだ先が落ちた…と。
……………………………
月華を助けられなかった…
奪っていれば…
……………………………
(あぁ…あの時言ってた女の名前も月華だったな…)
話が終わると俯く飛鳥。
甘味屋に誘い話を聞く事にした。
『美味いか?』
「うん!このお団子絶品だよ!」
笑顔で団子を頬張る飛鳥
『まぁ俺が作った団子の方が美味いけどな』
「ふふっ、政宗のお団子も大好きだよ!」
そう言う飛鳥の笑顔には影が見える…
(俺が気付くんだ…秀吉が気付かない訳ねぇーよな?)
そう思いながら団子を食べ終わった飛鳥に尋ねる。
『で?秀吉となんかあったんだろ?どうした?』
飛鳥は押し黙り下を向く
『俺には…言えねぇーか?』
なるべく優しく問う政宗に、飛鳥はポツリポツリ話し出した。
「さっき会った月華さんって居たでしょ?多分秀吉さんの事前から知ってるみたいなの…秀吉さんも…昨日会ってから…何か考えてるみたいで…それに…」
そこまで言ってまた下を向く…
『ゆっくりでいいから、話してみろよ』
「これは、私の勘なんだけど…多分二人には何かあったと思うの…月華さんが秀吉さんを見つめる目が…凄く切なくて…私の目と同じだったから…」
『飛鳥の目?』
「うん。…恋をしている目…」
いつの間にか涙が頬を伝う…
政宗はそっと飛鳥の涙を拭う
『飛鳥…?秀吉はおまえを大事にしてると思うぞ?大丈夫だ!心配するな』
そう言って頭をワシャっと撫でる
(やっぱり…あの月華なのか…?落ち延びて居たのか?)
政宗は飛鳥が好きだ。
それは飛鳥にも周りにも公言している。
秀吉にも隙あらば奪うと伝えてある。
秀吉に確認しなければ…
飛鳥を慰めながらそう思うのだった…