第30章 最愛の人〜秀吉〜
『秀吉様!私と!』
『いいえ!私とよ!』
周りの女子の声で我に返ったのか、そっと月華の肩を掴み身体を離す
『覚えていて下さったのですね?…嬉しい…』
月華は瞳を潤ませ呟く
(この人…誰…)
見つめ合う二人を側で見る
飛鳥の視線に気付いた月華はニコリと微笑んで飛鳥に話しかける
『貴女は…飛鳥様ですね?』
名前を呼ばれた。
しどろもどろになりながら挨拶する
「はい…飛鳥です…よろしくお願いします…」
月華の微笑みは女の飛鳥でも魅せられてしまう
『お噂は耳にさせて頂いてます。信長様から寵愛を受けていらっしゃる、織田家の姫君様でいらっしゃいますね』
否定する事が出来ず、頷く事しか出来なかった。
『秀吉様…しばらく安土におります故…』
そう言って月華は人ごみに紛れて行く…
キレイな人だった…
たぶん秀吉さんを前から知ってる人…
月華の目は焦がれる目…
秀吉と恋仲になっても飛鳥は秀吉に恋い焦がれる…同じ目をしていた。
『飛鳥…』
人ごみを見つめていると秀吉さんが頭を撫でる
「秀吉…さん」
『それじゃぁ、俺達は行くから…またな』
そう言って月華が行った方とは逆に進む
飛鳥はなるべく明るく努めた。
せっかく秀吉と城下に来ているのだ。
だけど胸の内は不安で仕方がなかった。