第30章 最愛の人〜秀吉〜
『飛鳥ー?』
「はーい!」
秀吉の御殿
恋仲になってからはここが飛鳥の住まい
怖いくらい毎日幸せだ
幸せすぎて幸せすぎて…いつかこの幸せが無くなっちゃうんじゃないか…って
それが怖い…
『飛鳥ー?どうしたー?』
物思いに更けてしまって、また秀吉さんに呼ばれる
「ごめん、ごめん!」
『ほらっ』
そう言って当たり前の様に出してくれる手を、絶対離さない様に握る
今日は二人で城下に食材を買い出しに行くのだ。
いつもは料理場に置いてある食材を自由に使わしてもらって、無い物は伝えると揃えてくれるんだけど…
たまにはこうやって手を繋いで買い物に行くのもデートみたいで楽しい
だけど…だけど一つだけどうしても嫌な事がある…
それは城下に出ると毎回起こる
『あっ!秀吉様よ!』
『お顔を観れるなんて…幸せ』
『私と甘味に行きましょうよ』
群がる女の子達。
(まただ…)
これはいつもの事。
恋仲になる前から秀吉さんと出かけると毎回女の子達に囲まれる。
もう慣れっこ…
『秀吉様』
白い肌、艶のある長い黒髮、すらっとしたスタイル、目鼻立ちがクッキリした綺麗な顔、大人の色気を纏う雰囲気…
『月華…?』
月華と呼ばれたその女の人は、囲んでる女の子達もそっと道を開けるほどキレイな人だった。
スッと近寄り自然な流れで秀吉の胸に手を置く
『お逢いしとうございました』
そう言って秀吉を見上げている
胸に寄り添う月華を見つめて驚いている様だ。
『本当に…月華なのか?』
信じられないと言わんばかりに尋ねる
『…はい…月華で御座います』