第26章 愛惜の憂苦 続R18 〜信長〜
広間入り上座に座る
今日は飛鳥も隣に座らせる
無言の威圧
自分の物と主張する
『皆の者、大望であった』
信長の言葉をかわきりに宴が始まる
隣には酒のせいではない、頬を染めたままの飛鳥
皆が思い思いに宴を楽しむ
『飛鳥』
政宗に呼ばれる飛鳥は信長を見上げる
先程とは違い優しい眼差しで微笑む
『行って参れ』
「はい」
頬を染めたままで飛鳥が政宗に付き話し出す
そんな飛鳥を酒を煽りながら見守る
(ワシは…俺は飛鳥を手放したくない…)
どんなに愛しても飛鳥は500年後から来た女子。
いずれ帰ってしまうかもしれない。
愛おしい
そう心から思っていても未来に帰りたがったら、飛鳥を引き止めれないと思っていた。
飛鳥の笑顔の為に…
愛する人の笑顔の為に…
だが、もうそんな気持ちの余裕はない
自分の気持ちの一線を越える
自分の素を出し…飛鳥の前では一人の男として…
【俺】と…
完全に自分を出したのはどれくらいぶりだろう…
【ワシ】ではなく【俺】
口ではもちろん、心の中でもそう自分を称した事はしばらくない。
俺と言わせた飛鳥を、もう手放すなんて出来るはずもなかった。
こんな事を思いながら酒を煽る
その顔は実に穏やかだった…
宴も終盤に近づく
それぞれに酒を飲み交わし一息つくと飛鳥を呼ぶ
飛鳥が信長の隣にちょこんと座る
『楽しんだか?』
ふにゃっと笑って頷く飛鳥
飛鳥の耳元に近づき
『飛鳥…其方を甘やかしたい…』
信長の言葉に顔を真っ赤する飛鳥の手を取り広間を後にする
廊下に出るとすぐに飛鳥を横抱きにして天守に向かう…