第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
またあの夢を見る
目を覚ますと人の気配
起き上がり枕元の愛刀を握る
そこにいたのは…
『お琴…』
部屋の入り口にはお琴が立っている
『信長…様…』
お琴は信長の前に立つと、サッと着物を肩から降ろす
『何を…』
薄暗い中ロウソクの灯りがお琴の裸体を照らす
『信長様っ…』
お琴は信長に抱きつき、その手が信長の着物の合わせにスッと入る
『貴様』
信長の言葉など聞かないように、お琴は信長の胸板を撫でる
『お琴は…信長様を…お慕い申しております…』
このまま信長の首筋に舌を這わさる
信長は飛鳥を想う
足が痺れて立てなくなった飛鳥
腕の中に抱かれ不安そうな飛鳥
熱に魘される飛鳥
そして
褥で信長に愛される飛鳥
お琴の肩を掴み引き剥がす
『っ…!信長様…お琴は…信長様に抱かれたい…今夜だけでいいのです…一度だけで…』
潤んだ瞳で信長を見つめる
『ならん。お琴…ワシにはこの世でただ一人…愛する者がおる。』
お琴はその場にうな垂れてすすり泣く。
開け放たれたままの部屋の入り口で、その声に気付いた政宗が声をかける
『信長様』
信長は政宗とお琴を交互に見て呟く
『お琴連れて行け…咎めはしない』
信長なりの優しさだった。
お琴の気持ちには例え一夜限りでも答えるわけにはいかない。
安土で待つ飛鳥の為に…
翌朝大名の館を出る。
『お気をつけて!』
大名が声をかける
そこにはお琴も居たが、昨夜のお琴の事は誰も触れなかった。
なおも信長を慕うお琴…
信長は目を合わせず馬を走らせた