第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
信長達が館を出た頃、安土では信長達の帰還の知らせが入る
『飛鳥!』
秀吉はは返事を待たずに飛鳥の部屋に入る
「はっ、はい!」
『御屋形様が夕刻戻るぞ』
満面の笑みで飛鳥に告げる
「本当に⁈」
信長様が帰ってくる…
逢いたかった愛しい人
『良かったな、いっぱい甘やかしてもらえ』
秀吉さんに頭を撫でられ、ふにゃっと笑う
「うん!あっ、でも…」
慌てて風呂敷から羽織を出す
『それ…城下に行った時のか?』
「うん、帰ってくるまでに作ろうって思ってたんだけど…間に合わなくなっちゃう」
『んじゃ今日は部屋に篭れ、昼餉は部屋に持って来させるから』
秀吉の優しさ
心から感謝する
「ありがと!頑張る!」
焦る気持ちを抑えながら、丁寧に縫上げていく。
昼餉が届いても手を付けてる時間すらもったいない。
何も食べてないのは気づいてはいたが、今回ばかりは小言を言わず秀吉は見逃す。
空が暗くなりだす。
秀吉は飛鳥の部屋の入り口で声をかける
『飛鳥…』
「出来た!!!!」
秀吉が最後まで話す前に飛鳥の声が被さる
「秀吉さん!出来た!」
満面の笑みで羽織を抱き締める
『間に合ったな。城に着くぞ?迎えに行こう』
「うん!」
城門まで出る。
だんだんと落ち着きがなくなる。
そわそわしてると秀吉が頭をポンっと叩く
『落ち着け』
笑われたけど、それでも良かった。
逢いたくて、逢いたくて仕方がない。
馬の蹄の音が聞こえる…
安土に入る…
馬を走らせる手に力が入る。
飛鳥の顔を見たい
早くこの手に抱き締めたい
気持ちが焦る
(こんな気持ちになる事は初めてだ…)
城が見える
飛び抜ける信長と愛馬
『あんな信長様、初めて見たな…』
『あぁ』
『嬉しそうですね』
三人は後ろを走りながら言葉を交わす。
【こんなに愛おしく想える人には出会った事がない…】
城門に小さな影が見える
馬が駆け寄ってくる
馬を降りた信長に飛鳥が駆け寄る
手を伸ばし飛鳥を腕の中に閉じ込める
「信長様…お帰りなさい…」
『飛鳥…待たせたな』
人目も憚らず抱き合う
多く語らなくともお互いの気持は伝わった…
完