第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
『信長様』
襖が開くと、そこには綺麗な打掛がとても似合う大名の娘【お琴】が平伏している。
『昼餉の支度が整いました』
女中がいないわけではないが、信長達がここに留まってから何かにつけてお琴が顔を出す。
『お琴様、ありがとうございます』
三成が告げてもお琴の目線は信長。
だが信長は目線を合わせない。
それでもお琴は見つめる。
『あんた、いつまでそうしてるの』
心底邪魔そうに家康が言うとお琴は慌ててその場を後にする。
お琴が信長を慕っているのは誰もが気付いていた。
もちろん信長も。
だがお琴が付け入る隙間は信長には一つもない。
信長が席を立つと正宗がボソッと呟く
『信長様…重症だな…』
その後ろ姿を見つめる家康
『お琴は信長様の事…好いてるね』
『信長様はどこか怪我押しているのですか⁈』
やはりわかってない三成
そんな周りを尻目に信長は毎日を憂鬱に過ごす。
数日後
『信長様、橋が直りましたので明日安土に戻れます』
『そうか。大儀であった。』
家康に告げられると信長の声は少し高揚する。
やっと安土に戻れる。
飛鳥に会える。
(飛鳥に会ったら…今度こそは甘やかそうぞ)
褥に入り目を瞑る
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………信長様…
飛鳥…待たせたな…
信長様…ごめんなさい…
飛鳥…待て…
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