第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
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………信長様……
飛鳥…
信長様…ごめんなさい…
何だ…何故謝る…
信長様…
信長…様…
ごめんなさい…
飛鳥…待て!何処へ行く!
…飛鳥!
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『飛鳥!』
飛び起きる。
身体中に嫌な汗が伝う。
信長の声に政宗が慌てて部屋に入ってくる
『信長様、如何されました!』
肩で息をする信長だか、政宗を制する
『大事ない。』
そう言って政宗を部屋に戻す
すぐ片付け安土に戻るつもりだった
熱を出した飛鳥を置いて来ていることに不安が募る
戦自体は何の問題もなかった。
だが、帰路につく途中川の氾濫で足止めされる。
もうどれだけここに居るのだろう。
気持ちばかりが焦る。
留まる為に寄った大名の館。
帰りたくても帰れない。
『飛鳥…』
名前を呼んでも返事は聞こえない。
言い様のない胸騒ぎ。
元々眠りは浅い。
飛鳥が隣にいる時だけ深く眠れる。
ここに留まってから信長は殆ど寝ていなかった。
寝れば飛鳥が何処かへ行ってしまう夢。
そのまま眠る事はできず朝を迎える。
『家康』
心底不機嫌な信長の元に家康が跪く
『いつになったら安土に戻れる』
一日一回はそう尋ねる
『後数日で橋の修復が終わります。もう暫く…』
ため息を吐き目を閉じる
(飛鳥…貴様は今何をしている…)
思う事は飛鳥の事。
熱は下がったのか。
体調は治ったのか。
寂しく…していないか。
決して口に出す事はない。
ただ数日間物思いに耽る信長を見て、家康達もさすがに気付いていた。
信長が夜な夜な飛鳥の名前を呼ぶのは、政宗だけでなく家康も三成も知っている。
これだけ女子で荒れている信長を見るのは、若かりし頃を知っている家康でさえ見た事はない。
それだけ信長とって飛鳥は特別な存在なのだ。