第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
完全に体調が戻るまで数日間、ずっと秀吉が側に居てくれていた。
しばらく使ってなかった自室に戻り、そこで寝起きをし、体調が戻ると女中の仕事にも復帰してお針子の仕事もこなした。
秀吉にどうして天守で寝ないのかと聞かれたが、曖昧に答えるとそれ以上聞いてくる事はなかった。
信長達は思った以上に長く城を空けていた。
きっと秀吉の所には状況が伝わっているのはわかってたが、私は名前を出さなかった。
だから秀吉も戦のことは話さない。
疑心暗鬼…
あんなに愛おしくて愛おしくてたまらなかった。
ずっと側に居たい。
貴方の為なら命だって惜しまない。
そう…そう思っていた。
いや…今でもその気持ちは変わらない。
だけど、信長の気持ちがわからない。
わからないから…だから、なるべく考えないようにしていた。
お針子の仕事を少し休憩して、縁側でお茶を飲む。
(反物に向き合ってると何も考えないのに…こうやって一息つくとやっぱり考えちゃうな…)
何かをしてないと、つい考え込んでしまう
「はぁ…」
何度目かのため息が出た
『なぁーにため息ばかりついてるんだ?』
秀吉が頭を撫でて隣に座る
「ううん!何でもないよ?秀吉さんお仕事は?」
『ん?今息抜きしに来た』
ニコッと微笑んでまた頭を撫でられる
「えっ?私と居たら息抜きにならないじゃん」
そう言って笑うと真面目な顔で見つめられる
『飛鳥の顔を見るのが俺の息抜きだ』
「っ」
そんな真面目な顔で…
信長からは絶対言われないような甘い言葉。
なんでも信長と比較してしまう自分に嫌気がさす
「またまた…」
ちゃんと笑顔が作れない…
そんな飛鳥を見つめる。
(そんな…そんな無理して笑うなよ…俺ならそんな顔、絶対にさせない…)
ふーっと息を吐き飛鳥の肩を掴みこっちを向かせる
『飛鳥…』
俯いてた飛鳥が見上げてきて目が合う
『飛鳥…俺ならお前を不安になんてさせない…そんな無理した笑顔なんてさせない…』
限界だった。
日に日にやつれていく飛鳥。
無理して笑う事が多くなっていく飛鳥。
飛鳥は御屋形様の寵愛をうけてる。
飛鳥もまた御屋形様を好いてる。
2人は恋仲だ…