第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
『御屋形様は…戦に行かれたよ』
「…えっ…」
驚く飛鳥に続ける
『急だったんだ。敵国が動き出したから。お前が熱を出した明方だったからな…2日前だ。』
飛鳥は自分が2日間も寝込んでいたことに驚いた。
確かにギリギリまで周りにバレないようにしていた。
戦も近く、忙しい信長にはより一層バレないように用心していた。
きっと迷惑がかかると思ったから…
ただ…信長が戦に行ってしまった事。
自分は何も知らされていない事。
その事がとてつもなく悲しかった。
「戦…始まったんだね…」
それだけ言って押し黙る。
『あぁ…だけど心配は要らないぞ?御屋形様がいる。負ける事は間違いなくないからな?だから飛鳥は早く良くならないとな…』
なるべく飛鳥の不安を取り除くように…
優しく囁き頭を撫でる
「うん…」
『飛鳥…熱も下がったし湯殿行くか…湯に浸かってさっぱりしたいだろ?その後ちゃんと食事取ろうな?』
そう言って天守を出て行く秀吉を、ぼぉっと見る。
(信長様…私に何も言わないで戦に行ってしまった…仕方なかったんだろうけど…なんで…)
熱を出した自分が悪いのはわかってる。
でもしばらく顔も見れてない。
声も聞けてない。
寂しいと思ってたのは私だけ?
声を聞きたいと思ってたのは私だけ?
私ばっかり…
私ばっかり信長様が好き…
信長様は…?
私を好きなの…?
(もう…わかんない…)
すれ違いに飛鳥の心は闇に侵食されて行く…