第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
秀吉と城下を楽しみ、気付いた時には空が茜色に染まり出す
『そろそろ戻るか?』
一日外で楽しみ、秀吉に甘やかされた…
「…秀吉さん…もう少し…もう少しだけ…」
繋いだ手にぎゅっと力を込める
秀吉はその言葉に驚きと喜びを覚える。
御屋形様の寵姫…こんな事思ってしまったらいけない…
そう思ってはいるが…自分の気持ちに嘘を付くのはツライ…
秀吉も繋いだ手に力を込める
『あぁ…じゃぁ少し歩くか』
手を繋いだまま草原まで歩く
空が赤から黒に変わる
隣の飛鳥に目をやると、風になびく髪が秀吉の心を擽る
(俺の物になれって言ったら…飛鳥は困るだろうな…)
今すぐ抱き締めて、口付けして自分の物にしてしまいたい…
そんな気持ちをぐっと堪えて空を見上げる
秀吉を引き止めてしまった…
何故か無性に城へは帰りたくなかった…
だって…戻っても天守にひとりぼっちだし…
同じ城の中にいるのに会えない…顔も見れない…
好きだけど…好きだからツラかった…
秀吉の優しさが身に染みる…
優しい手…
優しい声…
気持ちが揺らいでしまう自分が憎い…
「秀吉さん…今日はありがとう。凄く楽しかったよ」
心から微笑んで秀吉を見やる
『あぁ…俺は飛鳥が笑っていればそれでいい…』
目線が熱い…
頬を撫でられる
その目に吸い込まれそうなる飛鳥の頭の中を信長が通り過ぎる…
なんとか止まり頷く
「お城…戻ろうか…」
天守に戻ると久し振りに御針箱を出す
買って来た反物を広げて針を通していく
信長を思いながら…
秀吉の優しさを忘れる様に…