第24章 愛惜の憂苦 〜信長〜
信長の側近が故に忙しいのは百も承知だ
もちろん飛鳥を案じてない訳ではないのもわかっている
ただ自分なら…もっと飛鳥を笑わせられる
甘やかしてやれる…そう思わずにはいられないのだ。
好いているから…
「秀吉さん?」
あまりの沈黙に心配になり声を発する
『あっ、悪いな…よし!行こうか!』
気を取り直し腕の中から飛鳥を離し手を取る
飛鳥もそれを振り払う事なく受け入れ城下まで歩いて行く
城下に出たら必ず立寄る反物屋
あれこれ手にとって反物に魅入る飛鳥をそっと見守る
(久しぶりに見たな…飛鳥のあの笑顔…やっぱり飛鳥はこうやって笑ってなくちゃな…)
飛鳥が天守で寝起きする様になってからは、以前飛鳥にあてがわれてた部屋はいつもガランとしていた。
前まではそこに飛鳥がいて時間が空けば茶を飲みながら話をして飛鳥の笑顔は尽きることがなかった…
その笑顔を取り戻してやりたい…
秀吉はそんな風に思っていた
反物を手に取りながら飛鳥は考える
(信長様はどんなのが似合うかな…?やっぱり白ってイメージなんだよね…せっかくだからそこに金と赤の刺繍を入れて…)
結局はいつも信長の事を考える…
考え出すとまた不安が込み上げて沈み込んで行く…
(ダメダメ!せっかく城下に来てるんだから!)
首を振り邪念を消し去る
秀吉はそんな飛鳥を見てそっと頭を撫でる
『飛鳥…いい反物見つかったか?何か作って見たらどうだ?』
なるべく明るく…優しく声を掛けて飛鳥を見る
「うん!これに…しようかな…」
少しパールがかった真っ白な生地
それを買うと秀吉が持ってくれる。
反物屋を出て町をぶらつくと一軒のお店に金平糖を見つける。
「秀吉さん、ちょっと待ってて」
そう言ってお店に入り信長に金平糖を買うと、秀吉の元に戻る
『ん?何を買ったんだ?』
(金平糖…秀吉さんにバレると怒られちゃうよね…)
クスッと笑いながら
「内緒!」
『あっ、俺に秘密事か?教えろー』
笑いながら迫ってくる秀吉に身をかわしながら逃げる飛鳥
それは側から見れば、仲のいい恋仲同士の様だった。